細胞培養用培地とは?基本知識まとめ

細胞培養用培地とは?基本知識まとめ

細胞の研究は医療の発達などに必要不可欠。しかし、細胞の培養には膨大な知識量と適切な環境がなくてはなりません。

『適切な環境』の中でも、細胞培養において最も重要なのが細胞培養用培地です。

本記事では細胞培養の基礎知識ならびに、細胞培養用培地について分かりやすく解説します。

目次

そもそも細胞を培養するってどういうこと?

そもそも細胞をばいようするとは

『細胞を培養する』とは、細胞を生物から取り出して、培養容器内で増殖させたり、維持させたりすることを指します。

そもそも、命ある全ての動物・植物は細胞から出来ており、細胞がない生命体は存在しません。従って、私たちが細胞を理解することは必要不可欠であり、19世紀頃から、医療のために細胞を研究することが増えてきました。

そして、より精密に細胞を理解するために、細胞を取り出し培養して研究するようになってきたのです。

そもそも細胞は『本来あるべき環境外』におくと、働きが全く変わってしまいます。従って細胞培養する際は、なるべく取り出す前と同じ環境下に細胞をおかなければなりません。

また、細胞培養は、主に分子生物学で活用されており、「細胞が持つ本来の正常な形態」や「薬物を投与したときの細胞に与える影響」などを知るために行われることがほとんどです。

細胞培養の研究が進むと、新たな薬品が開発されたり、病気に対するアプローチが改良されていきます。

ここで重要となるのが細胞培養用培地。前述したように、細胞培養をする際には”細胞が本来置かれている環境下”におかないと、信頼できるデータが取れません。

そのため、培養に適した場所を用意しなくてはならないのです。それでは、細胞培養用培地とは一体何なのかについて、次項で詳しく解説いたします。

細胞培養用培地とは?

細胞培養用培地とは?細胞培養用培地は、細胞を培養するための液体または固体の栄養媒体のこと。細胞が成長、分化するために必要な栄養素やホルモン・成長因子を提供する。

細胞培養用培地は、細胞を培養するための液体または固体の栄養媒体で、細胞が成長、増殖、分化するために必要な栄養素やホルモン・成長因子を提供します。

細胞培養において最も重要な要素と言えるでしょう。

そもそも皮膚などから細胞を摘出し、ただ置いただけでは機能しません。場合によっては細胞自体が死んでしまうこともあります。

そのため、「培地」と呼ばれる生命外で細胞を培養するための液体を用意し、その中で細胞を培養するのです。一般的に、細胞培養はインキュベーター(培養器)の中で実施されます。

インキュベーター内で温度・湿度・気体組成を整えることで、それぞれの細胞に適した環境を作り上げます。

ヒトやマウスなど哺乳類の細胞培養では、温度37℃に設定し、水受け皿を置いて湿度を95%に保つのが一般的です。体温に近い37℃を保つことで、体の中の状態を再現でき、細胞が分裂増殖を繰り返すようになります。

また細胞が活動するのに適切な環境になった培地は、永久的に使えるわけではありません。

細胞は培地から必要な栄養素を使い、代謝し続けます。代謝産物が多くなった培地は”新しい培地”に交換しなくてはならないのです。

細胞が分裂増殖を繰り返し、増えてきたら、新しい培養容器に植え替え”継代”をします。

培地を交換する際には、急激な環境変化にならないよう繊細な作業をしなくてはなりません。

「細胞を培地に入れる⇒培地の環境を適切に保つ⇒細胞観察⇒培地交換」このサイクルを絶えず行う必要があります。

細胞培養用培地の種類

細胞培養用培地の種類。基本培地・低血清培地・無血清培地

培養実験が発展していない時期は、組織抽出物や体液から得られる培地を利用したものがほとんど。

しかし医療の発達や需要の増加から、合成培地と呼ばれる「人工的に環境を整えた培地」が開発されました。

現代では基本培地・低血清培地・無血清培地の3種類が、主な細胞培養用培地として利用されており、それぞれ特徴が異なります。

血清とは

血清とは、血液を凝固させ、血球や血小板などの細胞成分を取り除いた後に残る黄色みがかった透明の液体のことです。

基本培地における培養において、血清は必要不可欠な”栄養の供給源”です。

・細胞膜の浸透性調節

・脂質、酸素、微量栄養素、微量元素を細胞に運搬する働き

以上のような便利な働きをしますが、不都合な部分もあります。

血清を利用することで生じる主なリスクは以下の通りです。

①高コスト

②得意性・変動性で安定しないことがある

③特定の細胞培養において望ましくない影響が出ることがある

④信頼できる供給源から血清を入手しないと、思わぬトラブルが発生する場合も

血清を使った実験を成功させるためには、綺麗な血清を利用しなくてはなりません。

汚染などのトラブルが起きないように留意しましょう。

低血清培地

低血清培地とは、栄養素および動物由来因子で補強した基礎培地のことです。通常の基礎培地より、培地に必要な血清の量を少なくすることができます。

血清量が少ないため、望ましくない作用を低減できるのが大きなメリットです。

無血清培地

ヒトや動物由来の血清を利用しない培養方法を『無血清培地』と言います。

本来、動物細胞を人工的に培養する場合には、増殖因子等の成分を補うために、培養液中に5%〜20%程度の血清を利用しなければなりませんでした。しかし前述したように、血清は細菌やウイルスの影響で、望ましくない研究結果を招くこともあります。

そのため、無血清で培養することで未知の病原体による二次感染を防止しているのです。

研究をスムーズに進めるために、影響を受けない環境を作り出したと考えてください。

免疫療法で細胞を培養する場合、生きている細胞を利用するため殺菌や消毒ができません。

つまり、研究中に細胞が感染症にかかってしまうリスクがあるということです。このようなリスクを避けるために無血清培地は利用されています。

また、無血清培地は成長因子を自在に組み合わせることが可能。選択肢が広がるので「特定の細胞に対してのみ特化した培地を作りたい」といった場合に適した培地と言えるでしょう。

細胞培養用培地の主な使用用途

細胞培養用培地の主な使用用途

細胞培養用培地の使用用途は多岐に渡ります。以下に主な使用用途を挙げますので参考にしてください。

・薬剤のスクリーニング

細胞培養用培地は、薬剤のスクリーニング(ふるい分け)にも使用されます。培養中に薬剤を添加することで、薬剤が細胞にもたらす効果を調べることができます。

これによって細胞の反応を観察し、有効な治療薬の開発に役立てるケースが多いです。

・細胞の研究

細胞の機能や特性を研究するために利用されることも多いです。例えば、細胞の分化、増殖、運動、形態、細胞周期などの研究に利用されます。

・ウイルスや細菌の繁殖

あえて細胞をウイルスや細菌に感染させるケースです。

「どんな条件だとウイルスが浸食するのか?」を再現することで、感染症の研究や治療薬の開発に役立てています。

・細胞の保存

細胞培養用培地は、細胞を凍結保存するためにも使用されます。

長期間にわたって細胞を保存すれば、継代に伴う細胞の変化を防止したり、細胞を他機関に輸送することが可能です。

まとめ

細胞培養用培地は、多様な用途で使用されます。使用にはリスクと失敗が付き物。リスクを少しでも減らすためには、適切な培地が必要不可欠です。

弊社では、様々な使用用途に応じて細胞培養用培地を提案しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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